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農業機械メンテナンスナビ単管パイプの利用とメンテナンス方法>単管パイプ・クランプのローバルを使用した錆止め
 単管パイプによる構造物は、単管パイプの先端やクランプが特に錆び易く、見た目だけでなく耐久寿命にも大きく影響を与えます。錆び易いクランプ等に亜鉛メッキ塗料のローバルを使用した錆止めを行うことで、寿命を大きく延ばすことが出来ます。
ローバルとは
 ローバルとは、ローバル株式会社が販売する高濃度亜鉛末塗料(有機ジンクリッチペイント)の商品名です。同種の他製品でも亜鉛末を含み、配合成分(プライマー等)が異なるジンクリッチスプレーなどがあります。

ローバルを使用した錆止め方法
 工場での亜鉛メッキ加工と異なり、後から塗ることでメッキを施すローバルは、通常の亜鉛メッキ(溶融亜鉛メッキ:通称「ドブメッキ」)と比較して、塩害に強いが傷・摩耗に弱いという特徴があります。
 このためローバルの使用では、単管パイプ等による構造物が組み上がった後から塗ることでより効果を発揮することが出来ます。
 ドブメッキとローバル等の効果の違いについては、「防錆処理の方法>亜鉛メッキの防錆方法」にて紹介しています。

ローバルの種類
 商品名「ローバル」は、その色や用途による違いから複数の種類があります。単管パイプ・クランプに使用する場合でも使用量や作業性。求める防錆性。見た目から選択が異なります。
形状の違い:
・スプレー缶
 割高ですが作業性が良く、少量使用で残りを保管して後日使用する用途に適しています。
・液缶
 スプレー缶と比べコストパフォーマンスが良く、厚塗りし易い。揮発性が高いため、短時間で使い切る必要がある。作業中でも揮発により粘度が高くなるため、ゆっくり丁寧に塗る。数回に分けて使用する場合、別途専用の希釈用シンナーが必要となります。

製品の違い:
・ローバル(赤い缶)
 ローバルシリーズの中で防錆効果が最も高く、コストパフォーマンスが良い製品。
 色調グレー、艶がなく塗った直後はコンクリートのような色見です。本ページで使用している製品です。1kg 2,900円~程
・ローバルシルバー(青い缶)
 アルミ顔料を含む色調がシルバーの製品。赤い缶と比べ防錆効果は少し低い。赤い缶の上塗りとしても使用できます。0.7kg 2,400円~程
 シルバー色の部分的な補修で目立たずに使用することが出来ます。
・ローバルアルファ(紫の缶)
 色調が溶融亜鉛メッキ通称「ドブメッキ」に近く、防カビ・抗菌効果があるため、水分が残りや易く黒カビ等が発生している場所に適しています。赤い缶と比べ割高で防錆効果は少し低い。0.7kg 3,200円~程
・エポローバル
 特殊エポキシ樹脂を含み、ローバル株式会社以外の塗料による上塗りし易い製品。赤い缶と比べ割高です。1.0kg 3,400円~程
 この他、厚塗りタイプ(重ね塗り不要)、水性タイプ、エコタイプ(環境・安全配慮モデル)等の種類があります。

単管パイプ・クランプへの錆止め
 単管パイプは亜鉛メッキ。通常のクランプはユニクロメッキのため、防錆性能の違いからクランプの方が錆び易く、クランプを中心に錆止めを行います。また、クランプの錆止め作業のついでに、単管パイプの錆び易いクランプ取付部(取付による単管パイプの亜鉛皮膜の傷。クランプから発生するもらい錆)や単管パイプの先端部も合わせて錆止めを行います。

単管パイプ・クランプの下処理
・単管パイプ
 錆止めを行う単管タイプは亜鉛メッキです。既に発生している錆、油分、水分、その他汚れを予め除去しておきます。亜鉛メッキの被膜については、ローバルは亜鉛メッキの補修材としても使えるため、そのまま塗っても一定の効果を得ることが出来ます。
・クランプ
 錆止めを行うクランプはユニクロメッキです。ローバルの防錆性能を完全に活かすには表面のユニクロメッキを剥がす必要があります。しかし、クランプは形状が複雑なため表面のメッキ除去が困難です※1。メッキはそのままで上塗りしてある程度の効果を期待します。
 既に発生している錆、油分、水分、その他汚れを予め除去しておきますが、錆び易い箇所(ねじ山や稼働部)は錆の除去が難しく、可能であれば新品に交換を行います。

必要資材
 クランプ~20個までの錆止めに必要な資材です。
・ローバル(赤い缶)1kg缶:2,900円程
 防錆性能が高く、コストパフォーマンスが良い赤い缶です。1kg缶で塗面積2㎡(2回塗)ですが、クランプには流し込むように多量に使うため、1回塗りで約20個程塗ることができます。
 揮発が非常に早いため一度に手早く塗るか、丁寧・ゆっくりと作業する場合には作業中でも粘度が徐々に高くなるため、別途薄める専用シンナーが必要となります。
 クランプには丁寧に塗るより手早く、一気にたっぷり塗るのがお勧めです。
・刷毛:150円程
 有機溶剤に等に使用できる万能刷毛。毛先が柔らかいものがお勧めです。
・新聞紙など
 塗料が垂れるため周囲を汚さない養生のために使用します。汚れても良い場所や、見た目を気にしない場合には不要です。
・養生テープ:200円
 養生のための周囲を汚さないようように使用する新聞紙等を固定するために使用します。
・ローバルスプレー(赤い缶):1,600円程
 刷毛でたっぷり塗ってもクランプの凹部分や稼働部の隙間など塗り残しがあるため、仕上げに塗り残しのある隙間等へスプレータイプで吹き付けます。

ローバルの使用方法

  • ローバル 液缶
  • ・ローバル 液缶
    ・ローバル(赤い缶)
     1kg 2,900円~程
    ・ローバルシルバー(青い缶)
     0.7kg 2,400円~程
    ・ローバルアルファ(紫の缶)
     0.7kg 3,200円~程
     大きい店舗のホームセンター等の店頭でも入手が可能なラインナップです。
  • 錆止めをしなかったクランプ1
  • ・錆止めをしなかったクランプ
     単管パイプと通常のクランプで組立てた構造物です。屋外で20年経過により単管パイプの腐食は軽微ですがクランプが完全に錆びています。
  • 錆止めをしなかったクランプの単管パイプ
  • ・錆止めをしなかったクランプの単管パイプ
     クランプの錆が単管パイプにうつり(もらい錆)、クランプ取付位置の単管パイプが腐食して穴が空いています。
     また、単管パイプのクランプ取付位置は、取付に伴う傷により亜鉛皮膜が傷付くことでも錆び易くなります。
  • ローバル(赤い缶)
  • ・ローバル(赤い缶)
     1kg缶と塗るための刷毛。
     1kg缶で塗面積2㎡(2回塗)
     クランプに塗る場合、凹凸が大きく隙間まで流し込むように塗るため、約20個程を1回塗りで使い切ります。
  • 溶液と亜鉛粉末との撹拌
  • ・溶液と亜鉛粉末との撹拌
     缶を振り沈殿により分離している亜鉛粉末と溶液をよく撹拌します。
  • ローバル(赤い缶)の塗料
  • ・ローバル(赤い缶)の塗料
     液体時には濃いグレー色ですが、乾くやや白みかかったグレー。コンクリートのような灰色になります。
     分離(沈殿)しないよう適当に混ぜながら使用します。開封した瞬間からどんどん揮発して濃くなるため、10~20分程で作業を完了します。
  • 単管パイプ、クランプへのローバル塗装1
  • ・単管パイプ、クランプへの塗装1
     ローバルを刷毛でたっぷりと塗ります。クランプの内側(凹)にも付着するように流し込むように塗ります。
     たっぷりと塗ると滴り落ちるため、ローバルの缶で雫を回収しながら作業します。
     クランプの裏側など塗り残しに注意し、単管パイプのクランプの取付部分にも塗ります。
  • クランプへのローバル塗装2
  • ・クランプへの塗装2
     クランプのねじ部はメッキが剥がれやすく特に錆びやすい箇所です。刷毛で隙間に塗料を押し込むように流し込みます。
  • 単管パイプへのローバル塗装
  • ・単管パイプへの塗装
     単管パイプの特に錆び易い先端部分に塗ります。この他、亜鉛メッキに傷等ある箇所にも塗ります。(先端部分は傷がなくても塗る。)
  • 塗り残しの仕上げ
  • ・塗り残しの仕上げ
     完全に乾いたら塗り残しがないか点検し、塗り残しはスプレータイプで仕上げます
  • 乾いた状態
  • ・乾いた状態
     単管パイプの艶のある部分が塗っていない箇所。艶のない部分がローバルを塗った箇所です。
     艶の無い見た目を好まない場合、ローバルシルバーを使用します。
  • 周囲の汚れ
  • ・周囲の汚れ
     汚れに対する養生をしなかったため、滴り落ちが塗料で周囲が汚れています。一度汚れると掃除が難しいため、汚れが目立つ場所では事前にしっかりと養生を行うことが必要となります。
・ローバルを塗ったクランプ
 ローバルと塗るとねじ山が埋まるため、解体(取外)が難しくなります。
 短期使用(5年以内)であれば、防錆はおすすめ出来ません。しかし、防錆を行わずに長期に放置しても錆びによりネジが回らなくなり、解体(取外)が難しくなります。

・余ったローバル
 余ったローバルは再び密閉することで保存出来ます。
 しかし、液缶は作業中の揮発により粘度が高くなっています。密閉して保存しても更に粘度が高くなるため、余った量が少なければ保存せず、単管パイプや固定ベースに塗るなどして使い切ることがお勧めです。
 揮発により粘度が高くなったローバルは、専用シンナーで薄めて使用することが出来ます。

※1 クランプのユニクロメッキの除去
 構造が複雑なクランプは、研磨方法によるメッキの除去は困難です。
 そこでクランプのメッキ除去方法では、クランプ取付前に塩酸(塩酸や塩素系漂白剤)などに浸すことで除去出来ます。(出来るはずです)。
 しかし、苦労しても除去を実施しても、塩酸などを洗浄し、水分を完全に乾かし、取付、酸化が発生する前にローバールを使用しなければならず、スケジュールがかなり大変です。(水分をエアーで飛ばすなどして乾かさないと、自然乾燥させている間に錆び始めるかも知れません。)また、塗り残し部分はユニクロメッキの被膜がなくなっているため、非常に錆びやすく、複雑な構造であるクランプのユニクロメッキを剥がすことはお勧めできません。
 どうしてもクランプを錆びさせたくないのであれば、最初から亜鉛のドブメッキ処理されたクランプを使用をお勧めします(1個当たり1,000~1200円程)。

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